山添の 神山神社に伝わる話

脚本:櫛田地区公民館の歴史研究グループ「しゃべろに」
                          絵  :大北昌弘

1

今から始める紙芝居は…
むかし、むかし、はるかむかし
山添に言い伝えられているお話です。


 天照大神という神様が、伊勢神宮に
おまつりされる前、
倭姫が天照大神を飯野高宮神山神社に
おまつりしていたと言われています。


時が進んで令和の時代、「おじいちゃんと
 あかりちゃん」の会話で始まります

あかりちゃんは、山添町に住む 揥水小学校の三年生の女の子です。

【あかりちゃん】
「おじいちゃん、ただいまぁ~。」

【おじいちゃん】
 「おや、あかりちゃん。おかえり。
  今日の学校はどうやったかな?」

2

【あかりちゃん】
 「うん。今日は、ドッジボールをして遊ん
だよ。楽しかったけど、お腹すいたわ。」

【おじいちゃん】
 「ドッジボール、それはよかったなぁ。
  それはそうと…今日は老人会でな、
伊勢神宮へお参りにいってたんや。
あかりちゃんにお餅を買ってきたから
一緒に食べよか?」 
         
【あかりちゃん】
 「やったぁ~、私、お餅、大好き。」
  (もぐもぐもぐ)

3

【あかりちゃん】 
「おじいちゃん、伊勢神宮ってどういう
ところなん?」

【おじいちゃん】
 「伊勢神宮にはな、天照大神っていう
  大事な神様がおまつりしてあるんさ。
  天照大神はな、太陽の神様で、
みんなに平和をもたらしてくれたり
病気や悪いことをなくしてくれる
神様なんさ。みんなのことを守って
くれる神様やから、たくさんの人が
伊勢神宮におまいりに行くんさ。」

【あかりちゃん】
 「おじいちゃん、詳しいなぁ。
  その神様のお話をもっとして。」

【おじいちゃん】
 「そうかぁ…あかりちゃんに誉めて
もらえたなぁ。ハハハハッ…
  そんなら、よう聞くんやで。」

4

むかし、むかし、今からおよそ二千年前のことです。
当時の天皇は、天照大神を自分の住んでいる
宮殿でおまつりをしていました。

 ある時、「疫病」「はやり病」といって
原因のわからない病気に たくさんの人が
かかり亡くなりました。また次々と作物は
枯れてしまいました。天皇は、なんとか平和
な世の中になるよう 毎日毎日お祈りをしていたところ
、ある夢を見ました。


「私は、天照大神です。
  私をこの宮殿の外でおまつりして
下さい。そうすれば、平和な世の中に
なるでしょう」

 そこで、天皇は、天照大神が
気に入ってもらえるところにおまつり
しようと考えました。
【あかりちゃん】
 「わかった!
伊勢神宮には天照大神がいるんや…
  でも、どうして伊勢になったん?」

5

おじいちゃん】
 「倭姫というお姫様とお供がな、
天照大神の気に入る場所を求めて  
探したんさ。それが伊勢やったんやな。」

 実は、倭姫とお供の者は、天照大神を
どこにおまつりしたらよいか、何年もあちこち見てまわりました。
 奈良県を出発して、三重県、滋賀県、岐阜県、愛知県と回りました。
 でも、なかなかよい場所が見つかりませんでした。
そればかりか…

6

旅の途中では
 「おい、どこから来たんだ。おれたちの
  土地だぞ。勝手に入るな。」
 「この道は通さないぞ。」
 「さぁさぁ出て行け、出ていけ~!」
 「戦う気かっ!」
と言われたことが何度もありました。

そんな時は
 「私達は、あやしい者ではありません。
  天照大神をおまつりする場所を
  探しているだけです。」
と丁寧に説明をしました。

 何年も歩いて探しましたが、天照大神が
気に入る場所はなかなか見当たりませんでした。
それで、また、愛知県から三重県にもどり
、津市から松阪市にやってきました。

7

【あかりちゃん】
 「え~っ! おじいちゃん、天照大神  
  松阪を通ったん?」

【おじいちゃん】
 「そうやで。通っただけと違うで。
この山添においでたんやよ。」

【あかりちゃん】
 「ほんと?ほんとなん?天照大神
山添に住んどったん?」

【おじいちゃん】
 「そうやで。
昔の古い本に書いてあるんや。」


 みなさんは、「神山さん」という山を知っていますか?
山添から射和に行く道の右側にある山ですよね。。

8

【あかりちゃん】 
 「♪朝霧はるる 神山の 
頂きはるか 七色の♪
?水小学校の校歌に出てくるよ。」
【おじいちゃん】
 「そうや、そうや。校歌にあるな。
 「神山さん」は、字の通り昔から神様が
いる山として大事にされてきたんや。
  だから、その神山さんに、倭姫は、
天照大神を四年間もおまつりして
たんや。」
    
【あかりちゃん】
 「え~っ!四年間も?」
神山さんの頂上から景色を眺めると…
遠くには美しい海、伊勢湾が見えます。
山のふもとには、太陽の陽に当たって、
きらきら輝く美しい櫛田川があります。そこには、たくさんのアユがいます。

 きれいな水が流れる櫛田川のおかげで、
おいしいお米もたくさんできます。
 周りの山々では、狩りもできます。
 そんな自然豊かで美しいところに住んで
いる山添やその周辺の人たちは、心が優しく
争いごともなく平和な場所だったのでしょう。倭姫も、
なんてすばらしいところだろう
と思ったに違いありません。

9

【あかりちゃん】
 「飯野高宮神山神社って、今もあるよね。
  長い階段があって、地域のみんなで
掃除してきれいにしてるよね。
そやけど、倭姫は、四年間、
ここで何をしてたんやろ?」

【おじいちゃん】
 「そうやなぁ。倭姫は、山添もええとこ
やけど、もっとええとこないか
探していたみたいや。

10

【おじいちゃん】
あのな、おもしろい話があるんやで。
倭姫は、髪に櫛をさしていたんやけどな、途中で櫛を落としたんや。
それがもとで「櫛田」っていう地名が
ついたんやって。

11

また、倭姫が櫛田川を船で下っている時に、その船に魚が飛び込んできたんや。
それで「魚見」って地名がついたんやって。」

【あかりちゃん】
 「櫛を落としたから櫛田、魚が飛び込んで
きたから魚見っておもしろいなぁ。」

【おじいちゃん】 
 「倭姫が天照大神を連れて、
あかりちゃんやおじいちゃんの
住んでいる山添においでたんやな。      
これは、山添がよいとこやっていう
地域の誇りや。
飯野高宮神山神社も、櫛田川も、周りの
自然も大事にしてかなあかんなぁ。」

【あかりちゃん】
 「うん!わかった。
  おじいちゃんの話、おもしろかったよ。
  ありがとう。
  あした、友達のはると君にも教えて
  あげよっと。
  おじいちゃん、お餅もおいしいなぁ。」

 ここでおじいちゃんとあかりちゃんの
お話はおしまいです。

12


私たちが生活をしているこの櫛田川の
あたりは、昔から自然や食べ物が豊かで
とてもすばらしい場所でした。だからこそ、倭姫も天照大神も
、この場所を気にいってくれたのでしょう。
 これからも、この自然や地名を大事にしていきたいですね。

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山添の神社に伝わる話

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